ハイになる前に

「心ならもう決まってる 僕の前を僕の影が征く」

筒型豆腐とばってん荒川

先日突然、いちょう切りの豆腐が入った味噌汁の姿を思い出した
昔、豆腐って筒型のがあった
今見ないな〜

味噌汁に入っている豆腐がいちょう切りで浮いてると、ああ、お祖母ちゃんはトントン豆腐を買ったんだな、と思っていた

幼稚園〜小学校低学年くらいだったと思うが、いちょう切りの豆腐=元が筒型=これはトントン豆腐である、とひも付けていたのは、料理をしていたからではなく、スーパーで並んでいる豆腐コーナーに、筒型のがあったのを覚えていて、同じものを大好きなばってん荒川がテレビCMで勧めていたからである
CMの細かい文句は忘れたが、商品名部分が今でもばってん荒川の声で「トントン豆腐♡」と脳内再生される

ばってん荒川「ぴら〜」

昔のばってん荒川は鼻先を赤くしてなかったし、シワシワでもなく、むしろちょっとふくよかだった
どう見てもオッサンなのに、ばあさんのシナを作るのが異様に上手い人だった
お祖母ちゃんの荒尾弁は熊本弁とは似て非なるものらしいが、それでもやはりばってん荒川の言葉は非常に近く、しかもアッパッパみたいなのを着たりするので、子供心にばってん荒川はお祖母ちゃんの身代わりというか、象徴のような、崇拝にも近い思いで見ていた
ばあさん芸といえば、私にとっては志村でも青島幸男でも桑原和男でもなく、ばってん荒川である

トントン豆腐以外にも筒型の豆腐はあったので、いちょう切りの豆腐が絶対トントン豆腐であるとは限らなかった
子供心にもなんとなく、ウチのお祖母ちゃんはCMやってるようなメジャーな豆腐は使わないのではないか…とも思っていたが(値段のごつ味のようなか!大体あがんとは広告費が値段に乗っとうとばい!的な意味でメジャーを避ける風潮って…あるよね…)、なんというかもう、子供の身でばってん荒川の圧倒的な押しには抵抗できないというか、「筒型の豆腐はとりあえずトントン豆腐と呼ぶ」みたいな処理をしていた

 

豆腐です

もはや検索しても見つからない昔の青いトントン豆腐、遠い記憶をがんばって寄せ集めてもこの貧弱なるビジュアル…!敗北感…!!
青いビニールの口は堅いカネの留め金で留めてあり(昔のソーセージはこういうカネの留め口を歯でグリグリねじって引きちぎって開けてたね!)、口の方の豆腐にはビニールのシワがくっきりかたどられていた
使う時はこのボディの真ん中を一刀両断する

軽く調べてみたら、充填豆腐はぴっちり封ができるので日持ちがして便利、ということで、まずはこの筒型の袋に豆腐のモトを詰める形だった、ぽい
やがて機械化が進んで四角く整形できるようになって、これは推測だども、筒型より角型の方が輸送しやすいということで、筒型豆腐は淘汰されていった、のではないかと思われる

お祖母ちゃんは、充填豆腐が世に出た時はどう思ったのだろう
「豆腐が丸かやら、おかしかー」と思ったかもしれない
豆腐屋の豆腐の味に比べたら、豆腐によう似た違うもんたい、と思ったかもしれない
でも当時の私は、筒型豆腐のツルンとした食感が大好きだった
孫が好きなら…なんてことで、使うようになったかもしれない、聞いてみたい

今また、筒型の豆腐があったなんてことを、世の中は多分忘れていってる
欲しいと思っても、お取り寄せでもしないかぎり手に入らない
思えば、味噌汁以外にも、円筒形の豆腐をそのまま小皿に乗せた冷奴、なんかもよく食べた
あ〜、無性に食べたくなってきたぞ!!筒型豆腐!!

トントン豆腐の味噌汁

 

トントン豆腐のCMはなかった…残念…
しかし勢い的にはこのような感じ↓
「しごつ(仕事)の早か」の辺りがもう、たまらん…


【九州ローカル】 ばってん荒川さん ニッコウ住建CM 【昭和】