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ハイになる前に

「心ならもう決まってる 僕の前を僕の影が征く」

金・銀・パールプレゼント

つれづれ 昭和 懐かし お祖母ちゃん子の逆襲

洗面所に入ると、あの頃のお祖母ちゃん家の洗面所と同じ匂いがした。

お祖母ちゃん家の洗面所は、トイレマジックリンや洗濯洗剤の匂いなどがしたが、この場合の「同じ匂い」はそれとは違う。
子供の頃からの個人的なものであるが、洗面所でこの空気が感じられれば、その家はちゃんとしている、というバロメーターである。

洗面所は、水場特有の匂いというか、ちょっと独特の、他の部屋とは違う空気が漂う。
水回りの掃除が行き届いているとか、洗濯が健やかに回転しているとか、そういう事象自体が空気に反映されているような、ここが清々しい家は家全体も清々しい、という勝手な基準を持っていた。

お祖母ちゃん家同様、お母さんがちゃんとしているよそ様のお家の洗面所でも、この匂いは感じられた。
それを、今の自宅の洗面所で感じるとは、まるっきり家事ができなかった私からしたら快挙中の快挙である。
(ただし感じられるのはごくたまに…残念ながら毎日いつでも!とはいかない)

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私は4歳になる年の春まで、福岡の祖父母と同居していた。
4歳で宮崎に引っ越すが、その後学校に上がっても、夏休み・冬休み・春休みは全部、祖父母の家に行っていた。
1年のうち2ヶ月は、祖父母の家で暮らしていたことになる。

 

当時のお祖母ちゃん家は、二槽式洗濯機。
洗い終わると、洗濯物を浴槽に全部移して、手動ですすぎをしていた。
のちに全自動洗濯機になっても、いちいち風呂場ですすぎをしていた気がする。

その足元には、謎の足ふきマットがあった。

謎の足ふきマット

 色とりどりのストッキング風素材の横糸と、細い縦糸(絵は略したが黒である)がキツキツに編んであり、子供心にその素材感が奥様の履き古しを思い起こさせ、見るたびビミョーな気持ちになった。

編み目のバラつき具合から、これは市販のものではなく、お祖母ちゃんが自分で作った、というかお祖母ちゃんの世代で流行ったハンドメイドグッズ(例:チラシを細長ーーい三角形に刻み、くるくる巻いたビーズ?を繋げた例ののれん等)なのであろう、と思っていた。
後年、全く無関係な友達の家などヨソでも度々見かけたため、「えっこれ売ってるもんなのか…!?」と、静かに面食らった覚えがある。
今は見ないね。アレ何だったんだろう。爆発的人気でいろんな家にあったのだろうか。

 

ところで、洗面所の匂い。

匂いは人の記憶中枢を一番強く刺激するなどと聞いたことがあるが、この洗面所の匂いにつられて頭に浮かんできたのは、洗濯機を回しながら

「うれ〜しい〜白で〜す〜、ブル〜ダ〜〜イヤ〜♪
 金・銀・パ〜ルプレゼント♪」
と歌う祖母の姿である。

ブルーダイヤは、ライオンの洗濯洗剤である。
「金銀パールプレゼント」というキャンペーンをCMでガンガン流していて、CM画面にはケースに入って輝く、奥様方憧れのジュエリーが映っていた。
祖母はよくCMソングを口ずさむ人で、ブルーダイヤのCMソングもよく歌っていた。

 

ブルーダイヤには、私にとって強烈かつくだらない記憶というのがある。
当時の私の一番のお気に入りのおやつに、ケロッグの「シュガーポン」があった。
シュガーポンはシリアルの一種で、丸く膨れたポンに、甘い味が絡めてあり、これに牛乳をかけて食べるともうえも言われぬおいしさであった。

ピーターとは
「Kellogg」のロゴは子供心に怖かった
筆記体が読めないので、「け…」で止まってしまう恐怖
こんなに子供に親しみやすいキャラクターを載せておきながら読めなくしているとは、怖い会社だと思った
ケロッグ」のカタカナ表記も怖かった、特に「ッ」「グ」らへんのベースラインが散らかっている辺り

シュガーポンには、小袋入りのプラスチックの小さなオモチャの「おまけ」がついていた。

 おまけ発掘調査

 今では考えられないが、ポンの袋の中に直接、オマケの小袋が入っていて、行儀の悪い私は、箱を開けてすぐ、お菓子の中に手を突っ込んでポンをかき分け、シュガーにまみれた底のオマケを引っ張り出していた。

箱を下から開ける派の子もいたようだが、それは邪道だと思っていた。
(箱とは上から開けなければならない、と思っていた。当時から固定観念にがんじがらめである)

「金銀パールプレゼント」のCMを見るたびに、この金銀パールは、シュガーポンのようにダイレクトに洗剤の奥底に埋もれているのだろうか…と不思議な気持ちになった。

 中に…!? 

え、そんなん出来るとかいな?金・銀・パールやのに。
買ってすぐに手を突っ込みたくても、洗剤やから手が大変なことになるよね…(※自分はシュガーポンで手をベッタベタにしていた)
やっぱ大人は偉いねえ、洗剤が残り少なくなって金・銀・パールが出てくるまで我慢して使うっちゃねー、と思った。
そして金・銀・パールが洗剤の中でひっそり眠っている絵を想像しては、
「スーパーでどの箱にするかとみんな迷うっちゃろうな…」と心配していた。

 

もちろん実際は応募券的な何かが入っているのをライオンに送ってゲットする、とかそういう仕組だったと思う。

しかし当時の私は金・銀・パールが洗剤の中に直接埋もれている想像を捨てきれず、かといってその真偽を大人に聞くのも何となくバカバカしいことのような気がして、長いことそのままにしていた。
長い時間の蓄積が、強い記憶になってしまった。
風化しなかったのは「金・銀・パールプレゼント♪」のCMのしつこさのせいかもしれない。

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しかし、祖母が愛用していたのはブルーダイヤじゃなかったような気がする(ニュービーズとか全温度チアーだったような…)
歌しか歌わんったい、と思ったような記憶がある。

 

 

 


1980 ライオン ブルーダイヤ - YouTube