ハイになる前に

「心ならもう決まってる 僕の前を僕の影が征く」

【こねた】夢に出てくる人

夢の話は面白くないと相場が決まっているが、そこをぶっちぎって、今朝の夢

*

職場、シャワールームと洗面所と給湯室が一緒くたになったみたいな空間で、同僚たちと着替えや何かの後片付けをしている(※現実世界ではそんな職場にいたことはないし、同僚たちも未知の人々)
そのうち数人の同僚たちは、なぜかテロッテロに輝くシルクサテンみたいなパジャマを着ていて、きゃっきゃ見せあいこをしている
みんな今の朝ドラ「ひよっこ」に出てくる時子みたいに、背がとても高くスラッとしている
わしにも見せに来て、キレイでしょ〜と言うので、いいねえ、と答えると、時子は
「5・ま・ん・え・ん♡」
とウインク、その場の女子はみんな「きゃあ〜〜〜〜〜」「さっすが〜〜」としびれあがり、わしもおつきあいでしびれあがっておいた
すると時子が「私のこれ、着てみなよ!!」とパジャマ上を脱ぎながらわしに勧めてきたが、パジャマとはいえ時子の服は到底着れるサイズではないので、イヤイヤイヤ無理無理無理、着らんね着らんね、と丁重にお断りする
そうお?と時子は引き下がり、わしは引き続き後片付けのためにシンクへ向かう
そこには同僚が2人、片方はさっきのパジャマ見せあいこの数人のうちの1人
女優のような美貌だがそれを鼻にかけることもなく、汚れ仕事もテキパキ片付ける頼れる人である
彼女らは素手で洗い物に取り掛かっているが、わしは水仕事用の薄手のゴム手袋があるため、あーいいよいいよやるよ、と買って出る
さっそくやろうとしてブラシ?スポンジ?こするものを探すが、使い古しのちびた歯ブラシばかりが見つかり、ちょうどよいものがない
あれ〜?ないなあ〜とシンク下を見たり棚を開けたり、しているうち、ほわっ…

 

 

と、目が覚めた

 

目が覚めてからしばし、

「ああっ………今の人、めっちゃくちゃ知ってるのに、誰やっけ…!!!」

シンクにいた、テキパキ美人の同僚
他はみんな知らん人やったけど、あの人だけは知っとるぞ!!
知っとる!!知っとる!!!!うあ〜〜〜〜誰やったかいな…!!!

目を閉じてももう、あの妙な給湯室には戻れない
でもツヤッツヤのシルクサテンのパジャマを着た姿は、まだくっきりと頭に残っていた

ベッドの上でう〜ん…う〜〜ん……と唸りながら記憶を遡るが思い出せない
時間も迫ってきて、仕方なく朝の支度を始めた

*

ガチャガチャやっているうち、急に思い出した

「あっ…小沢さん(仮)や…」

あれはかれこれ10数年前、都内で働いていた時の社員さんだ

その職場には、同じ漢字で読みが違う苗字の人が2人いた
「小沢」と書いて「おざわ」さんと「こざわ」さん
どちらもわしとは違う部署の人で、あまり絡みがなかったせいか、わしはいつもこんがらがり、とうとう、覚えられずじまいだった
というか、最後頃には覚えた気がするが、時が経った今はまた忘れてしまった
同じフロアで働いてるのに何で覚えられないの、と、友達に笑われたような記憶もある

小沢さん(仮)は、六本木ヒルズに住んでるんだよ、と同僚の誰かが言った
六本木ヒルズって住めるの、と聞いたら、同僚は「賃貸がある」と教えてくれた
へええ〜〜〜、高いんだろうねえ〜〜、などと会話した

…と、この程度の情報しか覚えてないくらいの、うっす〜〜〜〜い間柄の人、だったのだが、なんでまた10数年経ってからこの人が夢に出てくるのか???
結局覚えられなかったので、思い出すにしても脳内で「おざわ…orこざわさん…」といちいち散らかるし…
確かに美貌の人ではあったが、わしはなぜか行く職場行く職場にいつも目をみはるほどの美貌の人が1〜2人いる人生だったので、特段この人だけが印象深かったわけでもないし、ぶっちゃけ会話したのも数年勤めた中で数回程度ではなかったか

幼い頃から、夢は当然フルカラー、荒唐無稽にして奇想天外、描写は微に入り細を穿ち、心の機微ひとつ見逃せないような一大絵巻を展開するタイプであるが、ときたまこうやって日頃は忘れ去ってしまっているような人が出てくると、ちょっと不思議な感興を覚える
思ったより、自分はその人のことを記憶にとどめているのだな、と、振り返るような気持ち

*

夢占いは好きで幼いころからいろいろ読んだ
今も夢に出てきたものをあれこれ調べたりして悦に入るが、いつも話半分である

白蛇は金運と言われても、どういう形で出てきたか、自分が白蛇をどう思っているかによって違ってくるだろうに、そのへんの解釈は自分でカバーしなければならず、それなりに面倒である
歯が抜ける夢は身内に不幸が…と祖母に何度も言われてきたが、歯が抜ける夢を見たあと身内に不幸が起きたためしがない
第一、それならあの頃毎晩のように見た、口の中に抜けた歯が後から後から溢れていっぱいになる、みたいなのはどう考えればよいのだろう
(それでもあの頃は、歯が抜ける夢を見ると毎回、目覚めた布団の中でヒヤリとした不安に襲われたものだった)

ユング夢分析も、読んでみてなるほどと思う部分はあっても、わしの見るような複雑怪奇過ぎる大長編ドラえもん夢は、なかなか適用できない(めんどくさい)
先ごろツイッターで話題になった、汚すぎるトイレの夢なんか、見る人は多いようだが「同じような夢を見る人が多いなんて、不思議だネー」以上のこと、何か言えるもんなんだろうか

寝ている間にこれほどくっきり見せられるものに、人が何かを見出したいと思う気持ちは分かる、わしも見出したい
しかし、現実世界では名前の読み方すら覚えられなかった小沢さん(仮)が、この10数年忘れ果てて生きてきたわしの脳内で急に鮮やかに再生されても、わしは何も受け取れない
へー、不思議だネー、と長いストーリーを思い返し、殆ど使われてないという脳の大部分を走り抜ける電気信号に思いを馳せる
どんなに長い夢を見たとしても、日頃使ってない大量の脳を使うから、実際に見てる時間は数秒らしいよ、というような話を思い出す

…夢占いが好きすぎて、いろいろ見まくった挙句こういう境地に至っていても、あまりに面白い夢を見た時はつい、寝起きにスマホに書きなぐる(昔は起きてすぐノートに書きなぐっていた)
夢は全く見ない、もしくは起きたらすぐ忘れてしまう、という人もいるので、これはわしに備わったアトラクションのひとつかな…という気でいる

叶うことなら、若い頃よく見た、空を飛ぶ夢をまた見たい
うーーーん、と力を込めると、数センチ浮いた状態でヒューッと移動できたり、念じれば高い空中を自由に飛び回ったりできる
仲間うちではそういう夢が見れる状態を「夢師」と呼んだが、これは明晰夢(夢の中で「これは夢だ」と分かる夢)よりよほど面白い
前日の夢の続きが見れるという人もいたが、わしは一度起きてしまったら絶対に続きは見れないタイプである

*

…夢の話、面白いのは自分だけで、やっぱり面白くないね
こんなに面白いのに、なんで面白くないんだろう…??
やっぱりどこまで行っても誰とも共有できんからかなあ??
手をつねって、どれくらい痛いと思ったか選手権、みたいな、無意味さがあるからかなあ…

※仮名です※仮名です